「あの人に聞いてみよう!」№2-半農半X提唱者 塩見直紀先生 「農はセンス・オブ・ワンダーが取り戻せる」


 半自給的な農業とやりたい仕事を両立させる生き方を、私は「半農半X」と名づけて提唱している。自ら米や野菜などの主だった農作物を育て、安全な食材を手に入れる一方で、個性を生かした自営的な仕事にも携わり、一定の生活費を得るバランスのとれた生き方である。お金や時間に追われない、人間らしさを回復するライフスタイルの追求でもある。いわばエコロジカルな農的生活をベースに、天職や生きがいを求める生き方だが、私は天職、生きがいに社会的な意義を含ませている。一人ひとりが「天の意に沿う持続可能な小さな暮らし(農的生活)」をベースに、「天与の才(X)」を世のために活かし、社会的使命を実践し、発信し、まっとうする生き方だ。小さな暮らしとは、たとえどんなに小さな市民農園、ベランダ菜園でもいいから食糧を自給していくシンプルなものである。

「半農半Xという生き方〔決定版〕」塩見直紀著 ちくま文庫p26−27

 京都府綾部市在住の半農半X研究所の塩見直紀です。

 ぼくは昭和40年生まれで、子どもの頃、我が家も兼業農家だったんです。父は小学校の教員でした。まだ大型トラクターやコンバインなどの農機具もない時代で、一家で田植え、稲刈り、稲木で天日干しをするようないい時代でした。僕らの少し上の世代は子どもも労働力だったみたいで、結構こき使われていたようです。僕らの頃は結構ゆるくなっていて、おばあさんが畑をやっているそばで虫を探して遊んでいました。半農半Xはそうした時代背景もあって生まれたともいえます。

専業は厳しそうだけど、0農はまずいんじゃないか

半農半X研究所を立ち上げたのが2000年なのですが、半農半Xというコンセプトが生まれたころは、ぼくはサラリーマンでした。平成元年にフェリシモという会社に入社し、すぐに地球環境問題と出合いました。すでに会社で取り組んでいたんです。この時代を、世界をどう持続可能なものにできるか。そのためには、生き方、暮らし方、働き方を変えないといけないと思い、そこからいろんな本を読むようになって、農業にも関心を持つようになりました。

 専業農家になる自信はない。でも、「農業0%(完全な消費者)」もまずいんじゃないかと思ったのです。世界の人口はどんどん増えていくし。ある本にはこんなことが書いてありました。戦争の原因は資源争奪か食糧争奪だと。だから自分たちで作らないと、と思ったんです。半農半Xとは自分の家族がどう生き抜いていくか、サバイバルしていくかという意識もゼロとはいえません。ことばは悪いですが、「したたかな戦略」ともいえます。

アイデアを生まないと

 大卒で入った会社には芸大生が多くて、やたらアイデアを出せる人ばかり。まず筆箱から違いました。筆箱の中にカラーペンがいっぱい入っていて、スケッチブックでアイデアを自由に発想し、マインドマップ的なものを操っていた。平成元年入社なので、だいぶ前です。マインドマップって言葉がまだ日本に入っていなかった時代で、アイデアを形にするやり方を見てすごくびっくりしたんです。

 それで、アイデアを出せる人間にならないとダメだと思って。入ってすぐ、環境問題と、アイデアをどうやって出せるかっていう2つの勉強をやりました。いろんなアイデア本を読む中で、アイデアは「既存のものの組み合わせ」っていうのが、アイデア業界の結論のようです。アイデアっていうのは組み合わせである。なるほどなって思いました。そういえば、半農半Xだって、小さな農とX(=天職)の組み合わせですね。

人は食べないと死んじゃう、生きる意味も必要

 半農半Xという生き方はなぜ普遍性があるのか。理由は2つあって、人は何か食べないと死んじゃう。これは「生命としての宿命」ですね。もう1つの理由として、人には「生きる意味」が必要なのではないかと思うのです。ビクトル・フランクルの『夜と霧』という名著がありますが、生きる意味をなくしてしまうと人は生きていけないのかもしれません。

 半農半Xという言葉が誕生して20年。コンセプトって消費されやすいものですが、ちゃんと生き残っています。やっぱり人は、食べないと生きられない生き物で、そして、生きる意味というのを追い求める生き物なのだと思います。そこに普遍性があり、半農半Xはこれからも生き残っていくコンセプトなのかもと分析しています。

受け取った人が完成させることば

 半農半Xというコンセプトは、いわば完成品ではなく、手に取った人、受け手が完成させるものです。完成形はその人に委ねられている。茨城の取手市だったら半農半芸、岐阜だったら半猟半X、高知県だったら半林半X、こういうのも二次利用ですてきですね。宮沢賢治風に言うと「永遠の未完成これすなわち完成なり」。あの名言を思い出します。半農半子育てママでもいいし、孫育てとか、なんでもいいのです。

移住しないとダメなわけではない。面積や時間が大事なわけではない。

 このライフスタイルは地方(田舎)じゃないとダメですか? そんなことはなくて東京でもニューヨークでもいいです。東京が大好きで住んでいる人は市民農園をしたらいいし、ベランダでもいいのです。大事なのは面積じゃないのです。エックスもフルタイムがいいとかじゃない。エックスはボランティアでもいい。輝く時間がちょっとでもあったらと思います。

 面積の大小でもありません。時間の長短でもない。1日8時間やることが偉いわけじゃない。少しでも土や植物に触れ、癒されたり、謙虚になれたらと思います。自分が納得いけたらOKです。都会の人も田舎の人も、出来る範囲で、誰もが参加できることを半農半Xは目指しています。

社会を変えるためにアクションしてもらう

 畑を借りたり、千葉まで行くのはできないけど、ベランダならできる。けれど、20階のマンションでエレベーターがなくて、土やプランターが運べないって言われたらどうするか。その時は、鉢やコップでいいんですと答えます。人間って、できない理由をじょうずに言っちゃう天才だそうです。畑を借りるのがダメなら、ベランダで、そし小さな鉢植えで、とギリギリまで詰めていって、その人にOKを言っていただく。ちょっとひどく言えば、そんな感じです(笑)言い訳させない。なぜそう考えるか。理由はやっぱり、社会を変えるためにはみんながアクションすることが大事で、敷居を低く参加してもらいやすくすること。強制してはダメだけど、人は気ままに生きてしまいすぎているので世界がグリーン化するためにはすこし強制や制約も重要でないかとも思います。

 半農半Xはスローライフって思われることがあるんですけど、ソーシャルデザインみたいなところがあります。全面には押し出さないんですけど、攻撃しないで、ゆっくりたのしく社会変革するみたいなところも含まれていると思います。手作業や手作りすることを取り戻す。手塩にかけることを取り戻す。汗をかくことを取り戻す。歯車で生きることもいいけれど、自分の仕事は自分で作るみたいな感覚も重要で、そうしたことも半農半Xで取り戻せるかもです。自分で食べるものは自分で作れたらいいですし、しなやかに強く生きられますね。

センス・オブ・ワンダーが取り戻せる

 最後に、僕の考える「農の良さ」を話しておくと、やっぱり「センス・オブ・ワンダー(自然の神秘さや不思議さに目を見張る感性)」を取り戻せるのが農の良さだと思います。センス・オブ・ワンダーは世界を変えた1冊といわれる『沈黙の春』で有名なレイチェルカーソンが約50年前に言ったことばです。「自然の神秘さ、不思議さ、目を見張る感性」、みんなで取り戻せるといいですね。畑で農産物が取れるのも大事だけれど、思索ができるのも農のいいところです。

 仮面ライダーもポケモンも原っぱからキャラクターが生まれました。仕事や新しい企画のヒントもきっと畑でヒントがもらえます。僕は農作業するときは紙とペンを胸のポケットにいつも持っています。ひらめきがあるときは書き留めるんです。現代人にはこうした思索が大事ですね。僕は「哲学の田んぼ」って言ってるんですけど。京都の「哲学の道」のように、田んぼも畑も哲学すること、思索することがとても重要だと思う。ぐるぐる考える、畑で瞑想するだけでもいいんです。市民農園で体を動かしながら瞑想。ウォーキングメディテーション、農的メディテーション、おすすめです。子どもやお孫さんをどうかいっぱい連れてきて、感性を磨くサポートをしてあげてください。ますます感性を育むことが大事になる時代になっていきます。

(数年前塩見さんに初めてお会いした時の写真)

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