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大人も、子どもも。ホームスクール畑で居場所を作る。


小沼陽子さん 藤沢市在住

私は茅ヶ崎に生まれて今辻堂に住んでいます。14歳の息子と11歳の娘、そして夫との四人家族です。子供の頃は学校も大好きで、いっぱい遊んで毎日楽しいっていう生活を送ってきました。 都内での仕事と子育てとでいっぱいいっぱいだった 仕事は都内の金融系の会社に20年間勤めてきました。 息子が保育園の頃は東京に住んでいました。仕事は忙しく、保育園に一番に連れて行き、一番最後にお迎えに行くという日々を送っていました。 夫の職場は茅ヶ崎だったので、送り迎えなどは当てになりませんでした。全部私がやらなきゃっていう思いで本当にいっぱいいっぱいでした。私だけなく息子もいっぱいいっぱいだったんじゃないかなぁって今は思います。

実家の近くに引っ越すと心に余裕が ギリギリの生活が続いていたので、会社から距離は離れちゃうけどやっぱり実家の近くに引っ越したいと思って、息子が小学校に上がってすぐに突然引っ越したんです。「もう無理!」と思って。夫にもあまり相談せずに引越しを決めてしまいました。引っ越してみたら、両親も茅ヶ崎に住んでいるし、夫の職場も茅ヶ崎だし、弟夫婦も茅ヶ崎にいる、急に気持ちが楽になりました。 こっちだとたとえ私が突然残業だとか子供が熱を出しても、誰かしらお迎えに行ってくれるという気持ちがあり、すごく楽になったんですよ。都内までの通勤が大変だと思いきや、通勤は毎朝湘南ライナーに乗ってたので、その時間はすごく楽しくて、本もいっぱい読めて、通勤時間が1日の中で一番幸せな時間になりました。 息子が学校に行きたくない

「わーすごい、ホント楽になった」と思ったら、息子が爆発したんです。「もう学校やだ」みたいな。学校だけでなく、学童もサッカーもみんなやだと。

私にはその意味が全くわかりませんでした。私は学校は楽しいところで、子供は学校に行くのが一番いいと勝手に思っていました。不登校という話は聞いていましたが、まさかうちの子が、という思いでいっぱいでした。だから学校を嫌がり逃げ回る息子を無理やり連れて行ったり、どうにかなだめて自転車や車で連れて行ったりというのを毎朝夫とやっていました。当時を思い出すだけでも胸がキューとなるくらい壮絶な毎日でした。 小学1年生と言っても保育園上がりでまだちっちゃいし、子供を一人で家においておくわけにはいかない、学校に行かないのならお昼ご飯を準備しなきゃとか、だから学校に行ってもらわないと困るという思いもありました。 だけど息子が本当に嫌がって、13階のマンションで飛び降りるんじゃないかってくらい走って逃げ回ったりする姿を見てハッとしたんです。

学校に行かせようとするのをやめたら、どんどん元気に

学校に連れていくことが息子のためなのか分からなくなったんですよ。今まで息子のためにって思ってやっていたけど、もしかしたら自分のためにやってるのかもって。近所の人もいっぱい見ていて、どたばたやっていて恥ずかしいし、友達も迎えに来てとか。そういう世間体みたいなのも気になっちゃって、もしかして子供の為ではなく、自分のためにやってるんじゃないかなぁって。

自分も会社にいかなきゃいけないし、7時46分の電車に乗らなきゃいけないし、早く学校へ連れて行かなきゃとか、自分のために無理矢理やっているんじゃないかなって思ったんですよ。そこから、もういいやって、子供は生きていてくれるだけでありがたい、学校に行く行かないではなく子供の幸せを一番に考えようと思って。それでもう学校行かなくていいやって思ったんです。

それで「もういいよ、家にいて」って私の心境が変わったら、子供はどんどんどんどん元気になってきて、目が輝き出してきて、それまで目が死んでたんですけど。子供が元気になってきているんだから私は間違っていないと思っていました。私もどんどん元気になっていくし。

学校に行かないことの生きづらさ

でも私の両親や周りのみんなは「なんで学校に行かせないの?」「小沼さんどうしちゃったの?」となりました。会社の人達からも「学校連れてかないでどうするの将来?」とか「内申とかどうすんの?」と言われました。

なんかわかってくれる人が全然いなくって、どんどん孤立していくんですよ。でも子供はどんどん元気になっていくから私は間違ってないっていうのはすごくありました。

学校に行かなくていいって、三人、私と子供二人はどんどん元気になって、でも周りからどんどん孤立していき、なんか世の中おかしいなと思いました。こんなに元気になってきたのに逆に生きづらいんですよ。

子供は午前中外に出ようとしても、近所のおじいちゃんおばあちゃんにどうしたのって言われるのを心配して、出かけられないんです。元気だったら学校行けばとか言われるのが心配で。家ではこんなに元気なのに外に出られないなんてかわいそうだなって思っていました。

おかしいなって思いが止められなくなった

うちの子供は学校に行くと、なんかこう抑えつけられちゃって、うまいこと自分を出せないんですよ。自分が安心できるところだともう思いっきり何でもできて、楽しく毎日過ごせるんですけど。

それで、こういう子もいるんだと思ったんですよ。私は学校が楽しかったけど、学校みたいなところだといいところがどんどん潰されていくような子がいるんだと知りました。すごく真面目で勉強も一生懸命やるんですけど、相当疲れて常に緊張しちゃっているんです。

そういうところにいなければ、いいところがどんどん伸びていくのに、常に怒られないように怒られないようにってやっちゃうから、いいところが本当に潰されていくんです。

だけど学校ではいい子だから「すごく楽しそうにしてましたよ」って、どの先生にも言われました。それで、なんかおかしいなっていう思いが止められなくなってしまったんです。

子供たちが大人になった時にもっと生きやすい社会、もっとこう、うちの子たちみたいな、レールから外れた感じみたいになっちゃってる、そういう子ものびのび生きやすい社会にしたいっていう思いが強くなって。子供たちが大きくなった時にそういう社会だったら生きやすいだろうなって思うんです。私はそういう社会に変えるための何かに関わることをやりたいって思ったんです。

会社を辞め、いろいろな人に出会う

20年ずっと勤めていた会社は、働きやすく、育休も二回もとったりして、みんなよくしてくれました。もともと立ち上げみたいなところからやった会社で、私が一番古株みたいになっちゃって居心地が良かったんですよ。

正社員をやめるなんて、この給料レベルの仕事にはもうつけないよ、とも相当言われました。でもやっぱり私、今の社会を変えられるような活動をやりたいと思って、何をやるかとか全然決まっていなかったんですが、会社を辞めちゃったんですよね。

それからいろんな人に会ったり、いろいろ勉強をしました。今は似たような思いの親たちで集まって、「朝カフェ」というのをやっていて、そこでつながりを作って情報も共有しています。孤立しちゃう親が多いんです。

(朝カフェの写真)

学校にも、不登校の人がいたらお友達になりたいし話しもしたいから教えてくださいって言ったんですが、個人情報だから教えられませんと言われました。学校からは「小沼さんしか不登校の子はいませんから」とも言われていたのですが、すごく近所にいたんですよ。そのお友達は私が親の会に参加して自力で見つけました。今もすごく仲良くしてもらっています。

学校に行かなくても勉強をやる子供

学校には行きたきゃ行けばいいし、フリースクールでもなんでも元気にさえなれば家でも全然勉強できるんですよ。うちの子は、家で学校的な勉強もやりたくなったらやってるんですよ。今はネットのスタディサプリという学習サイトですごく勉強しています。

スタディサプリは、やらされてやるとやらないけど、いざ自分が学びたいと思ったら早送りとかゆっくりとか色々できるのでとても便利です。子供がすくすく育ってるから大丈夫だろうという思いです。

子供も畑に来てやれたらいいなと思って

私は推薦で大学に入って、ずっとこうレールに乗ってきちゃったけど、会社を辞めてからいろんな人に出会って、世の中には素晴らしい人がいっぱいいるんだなって思って、感動しちゃいました。そんな中で小島さん(コトモファーム代表)を知ったんですよ。小島さんの本を知り合いから教えてもらって、藤沢にこんな人いるよって、えーすごいって思って、一度畑を見てみたいと思ったんです。

小島さんの生き方とか考え方にすごく共感しちゃって、畑なんて全然やったことがなかったけど一回ちょっと見てみたいと思って。それで畑を見て、やってみようかなって思って。子供も家にいるんだったら、畑とかに来て一緒にやれたらいいかなぁって思ってました。

それでやってみたら結局子供は全然こなくて、私だけハマっちゃったんです(笑)本当にそこに行くと空気が気持ちいいんですよね。ぼーっとするだけで。だいたい私平日ばっかり行っていたから、誰もいなくて。雨っぽい時とか、そんな時でも行くと気持ちがいいし。

大根ができて、思いのほかすごい自信に

野菜はなかなか上手にできなかったんですけど、大根だけができたんです。それが、「えっ!?」て、「私にも野菜が作れるんだ!?」っていうのが、思いのほかすごい自信になったんですよ。自分でもびっくりしたんですけど。

野菜って作るのがこんなに難しいんだって全然知らなくて、でもいざやってみたら大根ができて、私にもできるって。両親も畑をやっていて、「陽子に畑なんてできるの?」「草むしりもやらないのに」って言われていたのが、「陽子が大根できたの!?」って、家族みんな驚いていて(笑)子供達も「お母さんが作ったの?」と言ってくれて嬉しかったです。畑って、自信になるんだなって思いました。

うちの庭でも畑を始めたんですが、やっぱり畑のスキルや知識とかを持っていると安心なんですよね。もし何かあっても自分の畑や庭で食べ物を作れたら、お金がなくても生きていけるっていう、根本的な安心につながったりするっていうのがありますね。

やってみないとその感覚は分からなかったんです。だってこれまでも両親がずっと畑をやっていて、子供を連れて来なさいと言われても私は全然行かなかったんですよ。そんな中で私が畑をやるって言い出した時は、両親も「えー陽子畑やるの!?」って(笑)

うちの子は将来大丈夫なのかって考えることは多いし、子供たち本人も思っていたりするかもしれないんですけど、畑っていうのは、なんか自信につながるというか安心につながったりするんだなって、色んなことに気づかされました。それと自分にもできるんだって、思えるようになりました。

畑と教育の共通点を発見

あと、畑をやりながらいろんな発見があったんですよね。畑で一番大事なのは、土だと知り、子供の教育とすごく似てるなと思いました。今、うちの子は土を耕して根っこを張っている時期で、それをちゃんとやれば後はぴょんって勝手に伸びていくだろうって、畑をやりながらすごく感じたんです。

活動の仲間が畑を一緒にやりませんかと言ってくれた

ただ私一人で畑をやっているとなかなか畑に行けないので、せっかくウネが余っているのに野菜を作れていなかったりという事もありました。それで一回ちょっと辞めようかなって、1年経った契約の時に思ったんですよね。そしたら私が今やってる活動の仲間が一緒にやりましょうって言ってくれたんです。それで私一人じゃやりきれないし是非って。

そのご家庭も不登校とかの子供達が生きやすい社会にしたいという考え方が私と似ていて、やりましょうって一緒にやることにして、契約を今回また更新させてもらったら本当に楽しくて。

最初、人と一緒に畑をやるって、どうやればいいのか分からなかったんです。畑をここで半分に切ってとか出来ないし。だけど一緒に始めたご家庭の旦那さんがうまいこと、今日はこれやりましたと記載できる表を作ってくれたんです。それが、その都度更新も共有も出来てすごいんですよ。私はそういう管理が苦手だから、一緒にやれて本当によかったと思っています。

※このスプレッドシートはこちらをのサイトを参考にさせて頂いています。 https://www.willstyle.co.jp/blog/1497/

家族みんなが畑に

そしたらパパ、うちの夫も加わってやるようになったりして。そしたらなぜかか息子も来るようになって、最近は息子もしょっちゅう来ているんですよ。娘は散歩が好きなので、畑の周辺をぐるぐる散歩したりしています。だから1年目は私一人でやっていたけど、お友達と一緒にやってみたら、いろんな人が来るようになって本当に楽しいって思っています。

畑を不登校の子やその親の居場所に

不登校の子とかって、昼間、外に出にくいんですよね。別に悪いことをしてるわけじゃないのに、何か言われるんじゃないかとか思うと外に出られないです。学校が終わる午後3時頃にならないと出られないという場合もあります。でも畑だとあまり人もいないし、自由に誰でも来られるから、畑はいいなと思います。

母親もそうなんですよね。人と会うと「どう?」と聞かれちゃうのが嫌で、人に会わないように生活してる人もいます。マスクや帽子をかぶりスーパーも隠れて行ってますというのも聞きます。

犯罪を犯してるわけでもなんでもないのに、堂々と生きればいいんだけど、そういう堂々とできるようになるにはステップがあって、そういう時に畑ってすごくいいなって思っています。畑はすごい居場所になるんだなって。

朝昼晩いつでも、自由に行ける居場所ってあまりないんです。公民館や図書館もおばあちゃんとかいるからそんなに行けない。公園も誰かがいたりすると行けないんです。そういう点で畑はあまり人もいないし、いても何にも言わないし、いいなぁって思っています。もっといろんな人に、それを広げていけたらなって夢みたいに思っています。

ホームスクール畑で居場所を作る

今は小島さんのところでいろいろ勉強させてもらって、後々は自分たちで畑を持って、「ホームスクール畑」みたいな、大人も子供も誰でも勝手にやっていいよってという居場所を作ることができたらいいなぁって思っているところです。

小沼陽子さんの活動のサイトはこちら

ホームスクーリングで輝く みらいタウンプロジェクト

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