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会社を辞め、田舎に移住。自分の力で生きていると実感。

横井さん 30代 会社員→地域おこし協力隊 横浜市→都留市在住

大学卒業後、水処理薬品の会社に勤める。一度試薬の分析検査や販売を行う会社に転職。その後、会社を辞め2015年5月より地域おこし協力隊として山梨県都留市に移住。

ー自分の力で生きてみたい

 仕事とは別に、個人的な活動としてホームレスの人たちを支援したいっていうのがありました。大学の頃、就職活動の時にビッグイシューってホームレスの人が横浜駅に立って雑誌を売ってて話をしたりしてたんですよ。そういう人たちに手を差しのばして、社会復帰を手伝えないかなって。そんな時にですね、新聞に小島さん(えと菜園代表)が載っていてそう言った手を差し伸べる活動をしてると知りました。それで興味を持って、当時二俣川に住んでて、職場が鶴間、コトモファームは藤沢だしそんなに遠くないから行ってみようと思いまして。

  もともと大学の頃、サークルで田んぼをやっていたんですけど、社会人になってから全くそういう機会がなくなって、平日は仕事、土日は居酒屋でお酒飲むみたいな感じでした。なかなかそれに満足しなくて、ちょうどその頃リーマンショックとか震災とかがあったんですよね。会社がすぐにつぶれるようなことはないにしても、この先発展していくって気もしなくなったんですよ。そのくらいから、もう少し自分の力で生活してみたい、自分の力で生きてみたいなって気持ちがあったんですよ。自分で食べるものは自分で作ったりとか、セルフビルドって、家を自分らで建てたり、そこで仲間と一緒に住む、そんな生活をやってみたいなと。

ーパーマカルチャーで習った鍵穴の形の庭「キーホールガーデン」

 自分は小心者だっていうのもあるのか、日帰りで行ける距離、週末に行ける距離の田舎に足を運んでいました。藤野だったり那須だったり。そこで開かれているイベントで知り合った仲間や先に移住している人と情報を交換しあって色々出向いてました。移住者の中にもネットワークがあって、色々と紹介しあっているんですね。

 パーマカルチャーっていう、持続可能な農業・暮らしをするって考え方があるんですけど、藤野でそれを勉強してました。そこで習ったことをコトモファームで実践したりして。例えば、キーホールガーデンっていう鍵穴の形をした庭にすることでその穴の中に入ると手がとどく範囲で全部野菜が採れる作りにしたりしてました。オーストラリアとかヨーロッパで持続可能な暮らしに興味がある人がよくやっているらしくて、そういうのも自分もやってみたくなって、竹を農園まで運んできて、切り出して4つとか8つに割ったりしてました。そのために竹を割る機械を自分で買って、仲間と作ったり。

 小島さんからもらった牛糞と土を混ぜて堆肥を作ってみたり、炭素循環農法ってきのこ菌増やして、それが土を耕してくれるっていうような農法なんですけど、その農法が好きなおじさまに習ったり、自分でも勉強したりして、試してました。3年くらいやってましたけど、とても楽しい3年間でしたね。

 週末1日はコトモファームで畑をやって、1日は移住検討地に行ったりで、この時期、月曜日は大変でしたね。月曜日はかなり気合いを入れてました(笑)

ー機が熟し移住を決意

 色々移住先を考えてて、山梨県の都留市以外にも、伊豆や千葉県のいすみ市の大多喜町とかに行って、週末の農業体験とか、先に移住している仲間に会ったり、実際に住むところの家の改修とかを手伝わせてもらったりして、移住先でのネットワーク、移住候補地でのネットワークを1年くらい作ってたんですよね。そんな時に、実際地域おこし協力隊の仕事が移住候補地であるってことを発見したので飛び込みました。

 先に移住した人が移住してどうやって生活しているのか、できるのかって半分以上疑問だったんですけど、この人たちが1年2年暮らしてて、生き生きとした目を見てると自分でもできるんじゃないかって気になって。いく先々で実際そういう生活をしている人たちを見ていて、そういう生活をしてみたいなと思って。あと、このまま年をとって死ぬのはどうかって疑問があって。隣に座っている上司が自分の5年後10年後の姿なのかと思うと、ちょっと待ってくれ、という感じですかね。あと、週末コトモファームで小島さんとあって、年も結構近くて会社やってて、いつも生き生きしていたのを見てたのも影響してたんでしょうね。

ーご近所付き合いで地域に溶け込む

 それで、2015年の2月までコトモファームをやってて、その年の3月に会社を辞めてそのまま山梨県の都留市の地域おこし協力隊の採用に進んで、受かって、5月ゴールデンウィーク明けから実際に住むようになりました。

 多少住んでいる人のことを知っていたと言っても、その人たちも移住者で元々別のところに住んでいる人で、地元に元からいた人とはあまり接点がなかったんですよね。だから言葉が通じないとかありましたね。例えば、元々都留市も幾つかの村が合併してできてて、「明日一緒にカセイ行くぞ」とか「ヤムラ行くぞ」とか言われても場所がわかんないんですよね。地元の人たちはそういうのも当たり前のように子供の頃から使っているんだなって。

 あと、遊びに行くところがない、って当たり前なんですけど最初移住してきてから1〜2か月くらいは車もあったので2、3回くらいは横浜の実家へ帰っていたということもありましたね。

 今(2016年10月時点)3DKの平屋に住んでて、それが10棟くらいあるんですけど、隣近所が何やってるか、朝何時に家出るとか車の音とかも聞こえるんですよ。なんというかコミュニケーションが密で、夜、夏だったらバーベキューしたりですね、冬だったら鍋したりとか、皆さんがやってくれて。

何度もそうやってもらって僕も感謝の気持ちが出てきて、自分でも団地の人と一緒に鍋やったり、市役所にウスとかキネがあるんで餅つきみたいなのやったりしました。そうやってくうちに団地の人達から波及して地元の人たちとも知り合って。今、本当に楽しいですね。1日電話がかかってこないことがなくて、いろんなおばちゃん、おじちゃんからあーだこーだ心配されてます(笑)

 軽トラ運転してるんですけど、外に出ればすぐ対面から来る人に手をあげて挨拶さつとか。そうしながら街を歩けるっていうのが、都会では今までなかったなって。

ー月10万円あれば、豊かな暮らしができる

 農業もやってて、畑は2反5畝、田んぼは他に移住してきた人たちと一緒に1反8畝やってます。

 自分のやりたい農業は事業ってよりか百姓みたいな感じですね。お金をかけて大きいビニールハウス建てたりとか、単作で一面キャペツを育てる、みたいなのではなくて、身の回りで仲間とやって生活していく感じ。もちろんトラクターや刈り払い機とか機械も必要だけど、手で鍬が使えないと農業じゃないと思ってますし、それは面積が大きくなって管理が大変になっても続けていきたいと思ってますね。

コトモファームの時もそうだったのですが、畑をやっているとお隣さん同士の付き合いがあったりして、農作業っていうのは野菜を作るっていうのもあるんですけど、一緒にコミュニケーションをとれる方法にもなるのかなって思って。当時は会社の人たちとは別の居場所作りになるなって思ってました。それは今も思ってて、農業っていうのは地域に溶け込む手段でもありますね。

 農業やってると地元のおじちゃんおばちゃんが気を配ってくれて、手伝ってくれたりというのもありますし、一緒に作業をしててお昼の時間になるとお店に連れてってくれたりとか。一人一人考え方が違ってて、俺はこう思うけど、絶対他の人の言うことは聞かないとかありますね。おじちゃんやおばちゃんも農業30年とか40年やってきて出来た考え方なので、そういったところに感心させられて、自分ももっと勉強していきたいなって気持ちがありますね。

 販売もしてるんですが、都留は雪が降るんで、12月で収穫を終わらせて、1月に土を土おこしって清算させるんですよ1回。それで2月からビニールハウスとか家とか暖かいところで種をまいて、4月の末とか5月くらいから苗植えて作ってます。収益としては、大体、夏場でも12、3万、56789月で大体平均してみると月10万円にならないくらいですかね。都留や隣町の大月ってところとかの直売所とかに出してて、今はお小遣い程度ですけど、ただまあ楽しみながらお金がもらえるっていうのはサラリーマン時代にはなかったことなんで今はいいことなのかなと思ってやってます。ただ今、本当に月10万円くらいあれば、生活できてしまうんですよ。無理をしてるってわけじゃなくて。消費をしないんですよね毎日畑をやってると。お金を使う時間がないっていうのは本当に現実であって、今はそんな生活をしてますね。

あと、自分の家の前に無人販売所みたいなのを作ってみたんですけど、

それで野菜を置くと買ってってくれる人もいますし、おかず置いてってくれたりとか(笑)。物々交換もあったりして、こういうことをやってるとスーパーに行かなくても済む。済むってあれですけど、美味しいですからね、めっちゃ(笑)

 田舎では猿とか鹿とかイノシシとか獣が出るんですけど、それで農作物被害にあったりして。そういうわけで農業と狩猟が密接に関わりあってて、僕も罠の免許持ってて、たまに狩猟をやったりするんですよ。それで一緒に解体した人から肉をもらって、イノシシ鍋とかやってるとお金が出ていかないんですよね。

ー今後やりたいこと

 僕が畑をやってると、周りの人が気にかけてくれたりとか、やっている地域、見渡せるくらいの土地なんですけど、そこにいる人たちが賑やかになるっていうんですかね、そういうのを感じるんですよ。これからのこととして、そういった人たちと都会から来る移住してみたいって人たちが集う農家民宿みたいなことをやりたいと思ってます。農業と民宿をやりながら、都会で家庭菜園をやっている人たちがもうちょっとやってみたいって時に、手押しの耕運機で1作15mとか20mとか自分や家族で食べて、親戚にあげるプラス2、3万でも収穫して直売所に出すとかそういうこと体験してもらえたらなって。

 自分も去年移住してきて出来てるんで、農業に関心がある人たちならできるかなって。あと、地元の人と宿に来た人とで一緒に畑作業やったり、お茶したり、地元のおばちゃんの料理を一緒に作ったり、食べたりしたいですね。AさんとBさんは仲が悪いけど、自分が中に入れば話ができるとか、3人だと話が持つってことが本当にたくさんあって、過去のしがらみがないよそから来た自分がそういう役割を担えればいいなと思ってます。

 周りの人を喜ばせるには、まず自分が移住した先で「住んでみて楽しいんですよ」ってことを周りの人に感じてもらう。そうしたら地元の人に「都留っていいところなんだな」っていうのを分かってもらえるのかなって。そういった中で、地元の人にも都留に来た人にも都留の良さを感じてもらえたらなと思ってます。

(2018年3月25日追記 編集より:その後、農家民宿を開業した横井さんは新たな道を進み始めております。農家民宿の情報はこちらへ)

■Q&A

◯農業関係の質問

・その面積(畑2反5畝、田んぼ1反8畝)を一人でやるのは大変じゃないですか?土日とかも働かないといけない?

→大変です。あまりカレンダーは関係ないですよね。毎日採らないといけないし、採れないときは採れないし。できすぎちゃう時もある。色々考えないといけないけど、それも楽しいですよね。

値段は自分でつけて、朝に置きに行って、夕方に引き取りに行ったりします。残りが少なかったらお店のおばちゃんにあげたりとか。大変ですけど、日が暮れるのが早くなったなとか、夏用の作業着じゃ涼しくなったから冬用にしようかなとか、季節を感じれていいですね。

コトモファームをやっていて役立ったことはありましたか?

→土いじりを年間通してやっていたので、どの野菜をいつ植えて、いつ収穫できるかなど分かっていたので作付け計画が楽でした。あと野菜作りに興味が湧いて、本格的に農業をやってみたいという気持ちになりましたね。それと、無農薬栽培、自然農法、炭素循環農法など、知識があるだけで移住先の自然派志向の人たちとも話ができて仲良くなれました。

・農法とかはどうしてますか?

→都留市でやっていることに興味があって、そこでのやり方でやってますね。農薬とかも使ってますよ。

移住してきた人がいきなり自然農法をやろうなんて言ったらアレルギーを示す人もいますよね。やっぱり。刈った草を草マルチにしたりとか、地元の人でもやっている人はいるんですけど、それは家庭菜園レベルですし。1反とか野菜を育てて売るとなったらやっている人はほとんどいないですね。家の庭でやったり、まずはその土地でやっているやり方でやって、実績を残してから自然栽培をやるってのが良いかと思ってます。

◯移住関係の質問

・移住先へ永住する気でしょうか

→任期が終わったからといって離れるわけではないですけど、20年後30年後どうするかは考えていないですね。

・人間関係が暑苦しすぎるってことはありましたか。

→おせっかいすぎるとかはありましたよね。でも、何でそうしてくれているのかまで考えると、ある程度は理解出来るんですよ。

ただ、たまに息抜きしたくなって実家の横浜に戻るってこともありますね。実家から近いところに移住する利点の一つかもしれませんね。

・セルフビルドって言われてましたが、自分で家を建てるんですか?

→民宿始めようってなると、それは力を借りないといけないんですけど、地域にいろんな人がいて、この人はこれが得意とか、あの人はあれが得意とかあったりするんですよ。元大工さんに頼んで一緒にやらせてもらった次は全部はできないんですけど自分でやってみたりとか。その技術を持って他のところに行ってそうしたら次は自分が教える立場になったり。そういうのは別に家づくりに限らず、そういう生活なんですよね田舎っていうのは。あとそういうのはワークショップでやってたりします。上野原市の西原で古民家ワークショップとかが有名ですかね。そういう関心あるところに行って、仲間づくりをして、最初は手伝いから始めるのがいいかもしれませんね。

・消防団とか地域の集まりに入るように言われたりしますか

→僕のところはそういうのはないかな。次行くところはあるかもしれないけど。

・お酒飲まないとコミュニケーションがきついとかありますか?

→逆に車の運転で重宝されますね。僕なんかも、どっかに行ってお酒を飲むなんて時は、一番若いんでドライバーになるんですけど、僕の飲み代は他の人が出してくれたりとか。暗黙のルールであるのかもしれないですね。

・ネットやテレビってあるの?

→ネット環境はありますよ。テレビはいらなかったんですけど持ってきてくれる人がいて。ネット回線もなかったから部屋に穴を開け始めたとかもありましたよね。

・夜暇じゃないですか?何してるのですか?

→野菜の袋詰めしたり、温泉行ったり、外食や誰かの家に行ってご飯食べたりしてます。

・稼ぎについてはどんな感じですか?

→今は地域おこし協力隊で、市役所から年間200万円ほど出てます。あと家賃補助が60万円。それプラス野菜の売り上げ。3年で市役所からの給料はなくなります。あと活動費が100万円まで出るので3年のうちにそのお金を使って次の一手を打つって感じですね。

・周りからの反対はあったのですか?

→一応決断する前には話をしてました。最初、親は反対しましたよね。今は何も言わないですけど、友人たちが遊びに来てくれて生き生き生活してくれたらいいっと思ってるんじゃないですかね。決断する時期は限られてるので。

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