農家が福祉の勉強を始めて驚いた5つのこと

シリーズ「農福連携の街 藤沢」

一つ前の記事で何でこのシリーズを書こうかといったところを書いています。

今回の記事、長いですので、長いなぁと感じる方は赤字だけ見ていただくという手もあります。あと、上の画像驚きを表したかったのですが、変な顔ですみません。

前置き

私、山田はサラリーマンであり、かつ制度上は農家でもあり、福祉業界の知識はほとんどありません。

そのような中、農福連携に興味を持ち福祉の勉強をする中で「えっ!そうなんだ!」と驚いたことをまとめておくのは、意味があることなんじゃないかと。

というのが、ある業界に入ったり、学生時代専攻していたりすると、いつの間にかその業界での知識が自分の「当たり前」になり、「他の人も知っているだろう」と思うようになるものだと思います。

例えば、畑の見学に来た方によく「栽培中水やりが必要ないんですか!」と驚かれることがあります。

露地で野菜栽培をしている農家さんや家庭菜園をやられている方だと「当たり前」だと思っている知識が、栽培に関わったことがない人だと案外当たり前でないことはよくあります。

農福連携と言う、「農」と「福」、それぞれ別の立場で連携する際に必要だと思うのは、自分の「当たり前」だと思っていることが、実は相手にとって「当たり前でない」かもしれないと頭に入れ、相手と接することじゃないかなと思います。

そして、自分の「当たり前」から判断し、相手のことを「〇〇の常識としてはありえない」と突き放すのは良くないのではないかと思います。

ですので、これからまとめることは、自分が驚いたことであり、福祉から離れたところにいる人が「当たり前と思っていないこと」です。

もし、あなたが福祉関係の方なら「あ、そんなことも知らないものなのね」と思ってもらえたら嬉しいです。

私自身、福祉についての知識はほとんどありませんが、知り合いに障害を持った知人友人が数人います。

その人たちは、一人ひとり違っており、「障害者」とひとくくりにして接するのはもったいないなぁ、と思うわけでこの文章を書きました。

と前置きが長くなりましたが、本編に移ります。

農家としての自分が、福祉の勉強を始めて驚いた5つのことは以下となります。

(1)障がいを持った方の数が増えている。

まず驚いたのが、日本の障がいを持った方の数が増えていることです。

まずは図を、 

出典はどれも、内閣府 平成30年版 障害者白書(全体版)2017年12月11日

http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h30hakusho/zenbun/siryo_02.html

日本は2011年(平成23年)くらいから人口減に転じていると耳にしていたので、全体として障がいを持った方の数も減っているだろうと思っていました。

それなのに、増えているんだ!と。

さらに、少子高齢化が進む中、身体をのぞいて、知的や、精神の障がいを持った方の数は64歳以下でも人数が増えているというところに驚きました。

(2)特に精神の障がいを持った方の数が増えている。

図を見ると知的の障がいを持った方の数の増加が目に付きますが、単位が(千人)で精神の障がいを持った方の数は(万人)となってます。

知的の障がいを持った方の数は、平成7年約300(千人)から平成28年約950(千人)、ということなので、65万人の増加みたいですね(〇〇千人って慣れないと頭に入ってこないですね・・・)。これも驚きですが。

精神の障がいを持った方の数は、平成11年170(万人)から平成26年で361(万人)と190万人くらい増加しており、これにもとても驚きました。

(3)障害を持った方の雇用状況。雇用されている中で、精神の障がいを持った方の数が少ない。

(1)に載せた3つの図から就労が可能な年齢の数を見ると

身体の障がいを持った方18〜64歳 約101万人(平成28年)

知的の障がいを持った方18〜64歳 約58万人(平成28年)

精神の障がいを持った方25〜64歳 約193万人(平成26年  なんで精神だけ図の作りが違うんだ・・・)

と精神の障がいを持った方の数が多いようです。

それじゃあ民間企業に雇用されている人はどうかというと、

厚生労働省 Pless Release 平成 29 年 障害者雇用状況の集計結果 2017年12月12日

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11704000-Shokugyouanteikyokukoureishougaikoyoutaisakubu-shougaishakoyoutaisakuka/0000187725.pdf

平成28年だと人数は

身体の障がいを持った方 約33万人

知的の障がいを持った方 約11万人

精神の障がいを持った方 約4万人

計算すると、障害を持った方で、働ける年齢の人で、民間企業で働いている割合は

身体の障がいを持った方 約30%  

知的の障がいを持った方 約19%

精神の障がいを持った方 約2%

ってことなんですかね。

重度の身体や知的の障がいを持った方はダブルカウントになるらしいので、人数での計算になるとズレてくるとは思うのですが、それにしても精神の障がいを持った方の雇用は本当に少ないんだなと。

中間感想

農福連携が盛んに言われるようになってきたのは、こういう背景が関係するのかなぁなんて感じました。

園芸療法など、農業にはセラピー効果があるなんて言われてもいるので、特に精神の障がいを持った方の働く場所として良いのでは、と考えたのかなと。

で、ですね、今後この部分がポイントになってくるのかなと思いました。

というのは、「精神の障害」について知らない人が多いような気がします。

精神病は思春期から20代に発症することが多いらしいのですが、そしたら学校ではあってなさそうだし、大人になって発症したら仕事辞めることも多いんじゃないかな。

というか、精神病(疾患?)と精神障害の違いって何なんだ?

例えばうつ病は、障害になるのか、病気なのか。

さらに、精神の障害は目に見えない。線引きが分からない。

まず、客観的なデータで診断されるのは難しいらしいです。

地域精神福祉機構のページにこう書かれていました。文字を赤字にしたのは私です。

https://www.comhbo.net/?page_id=13149

引用開始・・・・

ところが、統合失調症やうつ病、双極性障がいといった精神科の病気は、そういった客観的なデータや画像だけで診断するのはまだ不可能です。

脳波検査やCT検査を行うことはありますが、これは他の病気との区別をつけるために行われるもの(鑑別診断)です。そのため、精神科の病気の診断に最も重視される方法は、患者さんの体験を言葉で語ってもらうことによる問診ということになります。

これはより専門的に行われることから精神科的診断面接と呼ばれることもあり、ご本人だけではなく、様子をよく知る近親者の話を伺って判断することもあります。

・・・・引用終了

さらに、精神の障害だと診断されたとしても、障害はその人の一つの特性であって、全てではないわけで。

おもてに現れる言動は精神の障害によってのものなのか、性格によってなのか判断がつかないんじゃなかろうかなと。

・・・要するにここで何が言いたいのかというと、「精神障害」というものは福祉業界にいる人以外にとっては「どういうものなの??」と分からない存在ではないかということです。そして人間わからないものとの向き合い方が分からないのではないでしょうか。

その「分からなさ」が解消されれば農福連携は進むのかなぁと。

もっと学校や職場、趣味などで関係する人が増えて、一言に「精神障害」と言っても色んな人がいるのね、となってくればいいなぁと。

私がこれまで会ってきた何人かの精神の障がいを持った方たちは、一人ひとり全然性格も違いましたし、馬が合わう人も合わない人もいました。

「精神障害の人」と見ずに、「目の前の○○さん」として接すればいいんじゃないかなと思いました。自分だって「ゆとり世代の奴」として接されたら気分良くないですし。

(4)福祉的就労について。作業所の工賃。

本編に戻って、驚いたことの続き。

障害を持った方がどんな働き方をしているのか見てみると、「福祉的就労」というものがあることを知りました。

福岡県がまとめている資料がありましたので、そこから説明を持ってきますと、

文字を赤字にしたのは私です。

http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/6179.pdf

引用開始・・・・

福祉的就労

雇用契約が結ばれる就労と、契約が結ばれない就労形態があります。多くが 雇用契約のない就労ですが、個人のニーズにあわせた就労が可能となります。 また一般就労の前段階としての訓練の意味もあります。雇用契約が結ばれる場合は、最低賃金が保障されますが、訓練ではなく社会的な責任が強くなりま す。「働く」場ではありますが、障害者総合支援法による就労支援のサービスとなるため、市町村で利用申請する必要があり、利用者負担もあります。

障害者総合支援法の福祉サービスに基づく就労支援施設

就労移行支援

一般就労を目指す方が利用。 就労に必要な知識・能力の向上の訓練を行う。

就労継続支援 A 型

就労の場の提供とともに、必要な訓練を行う。雇用契約あり。

就労継続支援 B 型

就労の場の提供とともに、必要な訓練を行う。雇用契約なし。

地域活動支援センター(施設利用料・市町村への申請の必要なし。)

生産活動や創作活動の提供。 社会との交流の促進や日常生活に必要な訓練を行う。

・・・引用終わり

これらの施設の中で、福祉的就労の場としてあるのは、

就労継続支援 A 型事業と就労継続支援 B 型事業となるのですが、それらの月の平均収入は、以下の図より、

2016年度

就労継続支援 A 型 70,720円

就労継続支援 B 型 15,295円

NHKハートネット福祉情報総合サイト 働く場は企業だけじゃない 障害者の就労 2018年4月16日

https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/27/

働いている時間が短いのかなとも思ったんですが、時間額にすると、

就労継続支援 A 型 754円

就労継続支援 B 型 187円

(「農の福祉力で地域が輝く」濱田健司著 創森社p58表2−1平成26年度の平均工賃)

・・・データの出所があっちゃこっちゃなっていて申し訳ないです。。

と言う金額になるみたいです。

金額だけを見て、賃金(工賃)の額が少ないだとか多いだとかと、批判できるものではないと思いますが、知らない人が金額だけを見ると驚くのではないかと思いました。

(5)障がいを持った方を受け入れると福祉事業所に国から給付金が出る

あと、福祉事業所のお金の流れも知らなかったのですが、障害を持った人を雇用したり(A型)、受け入れたり(B型)すると給付金が国から出るそうです。

地域などの違いで給付金額は変わるようですが、だいたい1人1日受け入れで5〜6千円くらいみたいです。基本報酬が584単位とかって書いてあるのですが、だいたい円にするには10を掛ければいいと聞きました。

参考:厚生労働省 就労継続支援A型、B型に係る報酬について ≪論点等≫  2017年9月13日

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000177374.pdf

この構造の良し悪しはひとまず深入りはしませんが、ただ、事業所に通うの障がいを持った方の賃金より、国からの給付金が多いとなると、「労働観」のようなものが特に農家さんとは異なってしまうのではなかろうかと。

「農」と「福」、別の立場にある人が連携するには相手がどんな立場にあるのか知ろうとするのが大事だと思うとは前書きに書きましたが、一番違うのはここじゃないかと。

障がいを持った方、事業所のスタッフ、農家の働き方の労働観の違いをちょっと整理します。

まずポイントは、「農家の多くは事業主」という点です。

対して、障害者や事業所のスタッフは言ってみればサラリーマンだと思います。

これは、障がいを持った方や福祉事業所が特殊というわけではなく、別の業界でもサラリーマンと自営業者との間では労働観の違いがあり、それがここでも生じやすいのではないか、という話です。

ちょっとまとめると、

表で何が言いたいのかというと、障害者や事業所のスタッフの方は給料という形で収入を得ています。そしておそらくそれは事業所の売上によらず固定されているんのではなかろうかと。(どうなんでしょう?)

片や農家は事業主であり、売上から事業の必要経費を除いたものが収入となります。

農家さんもお金のことだけを考えているわけではないですが、生活がかかっているので、売上を増やし必要経費を減らしたいと思っています。

そのため、農福連携で障害者の方を雇うと考えた時、雇うことで賃金として支払うお金より、売上が多くならないと雇うことは難しいだろうなと。

これは障がいを持っているかどうかに関係なく、雇い入れる人の能力を見て判断するということであり、障害がない人でも雇われない人は雇われないですし、障がいを持った人でも雇われる人は雇われると思います。

国からの給付金が障がいを持った方に払う賃金より多い事業所は、障がいを持った方を受け入れるだけで事業所の売上や収入はプラスです。

片や農家は、新たにスタッフを受け入れるだけでは給料分、収入はマイナスです。なので受け入れるのであれば、それ以上に売上を増やす必要が出てきます。それは障害のあるなしに関わらずです。

もしここを理解していないと、農家の元で働きたいと言っても話が噛み合わないのかなと思います。

まとめ

長くなりましたが、福祉関係の勉強をする上で、以上のようなことに驚きました。

自分が知らなかったことから考えると、農福連携でポイントとなってくるのは以下の2点だと感じました。

1:障がいを持った方、特に精神の障がいを持った方への理解や認知が今後もっと大事になってきそう。そのために、急に働くとかじゃなくてもっと日常的に接する機会があればいいなぁ。

2:福祉関係で働いている人と農家さんとの労働観の違いに注意が必要なのかなと。障がいを持った方の雇用を考えると、給料以上の売上アップが前提となるので頼んで受け入れてもらえるものではないのかなと。

今回の記事では障がいを持った方の雇用についてメインで考えてきましたが、農福連携の形はもっともっと広いものだと思います。

そのあたり、前回記事に書いていますので、そちらもご覧いただけると嬉しいです。

また、農福連携を小さく始めるのはどうかという提案を以下に書いていますので、そちらもご覧いただけると嬉しいです!

農福連携を始める最小のステップ

#農福連携

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