拡大より充実 食卓と農業の現場との繋がりをつくる
柿右衛門農園ご夫婦
旦那さん:祥誉(よしたか)さん (以下「よ」)
奥さん :えっちゃん (以下「え」)
インタビュアー:小島
「畑を始めたきっかけは?」
よ:2014年に就農して、4年目。妻と子一名、5歳になる娘がいます。
娘のマホちゃんが産まれて就農しました。
2008年、結婚してすぐに大豆レボリューションというのをやってて、そこにうちらが通うようになって。
え:初めは「半農半X」って本を私がたまたま手にして、「これだ!」って思って、それでその本をきっかけに検索して通い始めた。あの本は強烈だった。バリバリ私は勤めてたし、祥誉も勤めてたし、都会の生活をしてて。
(半農半Xとは。提唱者の塩見直紀さんのインタビューはこちら)
私のおじいちゃんが畑やってて、梅林もあったし、遊び場は畑みたいな。
牛とかもやってた。小っちゃい時にそういう生活してたからか、半農半Xを見た時に、無理がなくて、半農半Xやろうと思って、引っ越してきたのが湘南台。それが2010年の冬だったか。
よ:で、すぐに震災があったんだよね。
え:それからへっころ谷(藤沢のほうとう屋さん)のアルバイトに面接に行って、面接では採用されなかったが、藤沢でのつながりのきっかけとなってくれた。その会社と半分ずつやって、だんだん藤沢の仕事を見つけて農業に、って感じだった。
祥誉の方は、東京の仕事を辞めて、藤沢本町の会社に勤めながら、半農半Xの道へ。
藤沢に引っ越してきたのは、相原さん(神奈川で有機農業を長く営んでいる農家さん)が近くにいるってことと、三浦の農家さんにも近いからってことで湘南台。
「農業の道に進むのに、勇気はいりました?」
え:全然、抵抗はなかったよね。結構私ずーっと都落ちしてるから、世田谷、横浜、たまプラ、湘南台、7丁目に住んでたかな、駅前の方だったから、それから打戻だから、どんどん田舎に(笑)
よ:俺は迷ってたんだよね。でも嫁さんが、やっちゃいなよって(笑)いつも
言われて、じゃあやるかって。
え:一番大きかったのは、そのタイミングで制度に青年給付金ができるよって。
よ:その年からだったんだよね、たまたま。
え:こっちに引っ越してから、農業系のイベントとか、有機農業何チャラ、とか。いろいろイベントに沢山出て、給付金の存在を知って、少し本格的にやってもいいかなって。じゃあいつやるのって。今でしょって(笑)
そう決めたのが、お盆休み、ちょうど。
その時は朝から晩までサラリーマンで働いてたから、話す時間がなくて。お盆休みになって話す時間ができて、これからどうするのって。じゃあやるかって。
よ:その前から、2012年から田んぼはやってた。自給道場ってのを2012年からやってるんだよね。
え:グリーンズの自給道場ってのを調べると、たけいしちえさんがすごくよくまとめてくれた記事がありますよ。
(こちらから読めます)
よ:自給道場を始めて、同じくらいの時にごんばち(藤沢のほうとう屋さん)のお父さんに家庭菜園の紹介してもらって、家庭菜園やりつつ、自給道場もやって。
え:流れをまとめると、湘南台引っ越してきた→へっころ谷の面接受けた→家庭菜園始めた→震災が起きた→田んぼを始めた→それらをやって1年くらいしてから、どうすんのって話をした。
あの頃私が働いて、(半農半Xの)X、祥誉が農業、二人で半農半Xになるねって考えてた。私は週三だったんだけどフルタイムで働いて、祥誉は仕事辞めて、相原さんのとこに研修に行ったんだけど、行った時に妊娠しちゃって。大変だーって。
よ:相原さんのとこに研修したのは2013年で、2014年まで。その間に農地とかも見つかって。家も自給道場のご縁ですぐに見つかって。研修中に引っ越したのかな。
「栽培へのこだわりは?」
よ:有機ってところと、最近は菌にハマってるんですよね。あと、種ですかね。
菌は具体的に言うと、納豆菌と酵母ですね。
堆肥は買ってるんですけど、そこもちゃんと菌を培養して作ってるところで、それにさらに納豆菌と酵母を加えて、加えてと言うよりか畑に散布してる。
トマトとキュウリには納豆菌をまいてます。まき始めて、病気が少なくなりましたね。
種は固定種とか在来種とか、自分で種とりを極力やって、持ち種を増やしてる。夏野菜はほぼほぼ。冬野菜も七、八種類くらい。種を繋げることを少しずつやってます。
種とりをするようになったきっかけは、固定種とか在来種で育てた野菜が美味しかったんですよね。一般流通に向いてないけど美味しいんですよね。まだ種とりはちゃんとやってるって言えるレベルじゃないんで、趣味でやってますって言ってます。
え:ニンジンとカブとナス、トマト、が他とすごく味の差がわかりやすい。完全に味が違う、露地の美味しさがストレートに出る。
「栽培を含めた活動のテーマはありますか?」
よ:テーマは、2個あるかな。一つはうちの野菜で食卓をちょっとでも明るくしたいな。もう一つは「繋げる」ことをどんどんしていきたい。種もそうだし。実際に作物が出来るところは普通に働いている人だと接しづらい。分かりづらいから、そういうのをね、すごく興味を持ってる人だけじゃなくて、色んな人たちに、ちょっとでも畑へ来てもらえないかってことを常々考えていますね。
楽しいイベントをやったりだとか、野菜を食べて「すごく美味しかった!」って興味持ってもらえたら来てもらいやすいと思うんで。「なんで美味しいんだろう?」って思ってもらえることをちょっとでもやっていきたいなって。食卓と農業の現場を繋げるって、そういうことを少しずつ広げていきたいなって。
え:お米も野菜も、安くて当たり前が蔓延しちゃってるから、なかなか価値が伝わりづらい世の中になっているのかなって。
サツマイモとかもやっぱり、自然の中で数ヶ月という時間をかけて育って、その後、ひとつひとつ掘り上げたり、といった手間や時間など、生産の現場にある価値が見えづらくなってるって思う。
小島:コトモファームの会員様もそうだけど、自分で野菜作りをしている方だと、商品の裏側にあるストーリーや生産者目線で見てくださるので、お客様というよりは、一緒に農業を支える仲間って感じになっていくから、少しでも農業体験してくれる人が増えるといいなと常々思ってます。
え:直売でも、お客さんが、すごい二極化してて。
野菜の価値を分かってくれて「安くない?柿右衛門さん大丈夫?」って言ってくださるお客さんもいて。けど、高いとおっしゃるお客様もいて。「すみません。一つ一つ手をかけてますから」ってことも。
え:核家族がすごく増えてるから、野菜を買う人っていうか、料理する人が減ってるんじゃないかな。料理の仕方がわからない。
仕事をもっと減らして、手作りで料理作った方が、トータル的には、将来的なコスト、例えば病気になったりだとか、全然変わってくると思う。
それは私がパートで働いてる時にすっごい感じた。
忙しくして、惣菜とかも買って、体調崩して、病院代とか払ってって、なんかおかしいなって。これだったら仕事減らして、ご飯を作れる方が、結局いいんじゃないかなって。農業やったりで色んな方と関わっていくと、お金にならない価値がすごい。ご縁とか、助け合いとか。
よ:それが一番の変わって良かった点かな。
「これから何かありますか?展望とか」
よ:休みですかね。余裕を持ちたい(笑)
え:最盛期の無駄になっちゃう野菜がかわいそう。「せっかくあなたたちキュウリに生まれたのにごめんね」みたいな。なんとかしてあげたいなって。
あと、何か、料理教室とか、ワークショップとかを増やして。保存方法とかも広めていきたい。私も含めてまだまだ勉強不足だから。
家庭とかレストランさんとかで保存するのは、どれが一番最適なのか、一緒に考えながら、一番いい状態で食べてもらう。
1回食べてもらうとハードルが下がるから、だからまた買おうってなって欲しいなって。「来年またお化けキュウリみたいなの使おう」みたいな。規格外の野菜の美味しさもあるから、こんなにでかくても美味いんだみたいな。理解ある料理人の方が、あえて、大きい規格外野菜を選んで買ってくれるのがありがたい。
飲食店さんって最高に野菜を美味しくしてくれる所だと思うから、レストランさんともタッグ組んで、そこで食べて、それでうちの野菜を知って買いに来てくれるっていうのがいいな。
今日もね、実際「お誕生日にレストランで食べた野菜がすっごく美味しかった」って、翌日わざわざまた買いに来てくださって、なんかすごく感動した。
みんながすごいハッピーで、お客さんも満足してるし、飲食店さんも嬉しいし、「美味しい野菜あってのうちですから」って言ってくださいますし。好循環だなって。
そんな風に関係性とかを濃ゆくしていきたい。あんまり広げるっていうよりか、濃くしていきたい。
恩師の言葉で、「拡大より充実」ってあるんですけど、人を雇うとか、畑を広げるとかじゃなくて、基本二人でできる範囲で、どれだけ濃ゆくできるか。
「何かお客様に伝えたいメッセージはありますか?」
え:珍しい品種に出会った時に、とりあえずやってみようって、そういう風に接して欲しい。
アンパイを狙っちゃうから、みんなキュウリ、トマト、美味しいねって。それでもいいんだけど、そっから先じゃあ珍しい空芯菜って何って、白ナスってどうやって食べるのとか。
これはどうやって食べたらいいのって聞いて、買ってみようかなぁって思って欲しい。葱坊主とか、天ぷらがうまいのでチャレンジしてほしい。
え:野菜をどうやって食べたら一番美味しいかなって考えるのが、私は一番面白いと思ってるから、そこをみんなと共有したいなって。
珍しいねぇで終わらないで、食べて欲しいなぁって。食に対してなんか、貪欲にというか。
キッチンカーをやってる料理人さんと、「野菜で遊ぼう」とか「一つの野菜でどれだけいっぱい調理できるか」とかやれると面白いねっていつも話してる。
いろんな野菜を楽しんでもらいたいです。
Comentarios