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自家採種を楽しもう!ー固定種・F1の違いについてー

来年4月1日に種子法が廃止されることが決定し世間を騒がせていましたが、恥ずかしながらどんなことが起こっているのか情報を追えていませんでした。

そこで、ちょうど川崎市で「種子法廃止とこれからの農業」と題した講演があるということで参加することに。

どんな内容だったかはこちらの記事にまとめてあります。

この講演に行く前に多少予習をしたので、そちらもメモします。

「種」関係で頭がこんがらがっていた点を自分なりに整理したので、同じようにこんがらがっている方の参考になれば幸いです。

高校1年以降、生物学の勉強をほぼしていないので、今回十数時間で調べた内容だけで書いています。もし間違いがあれば、指摘してもらえると大変助かります。

植物の体のつくり

受粉だと交雑だとかを考える時に色んな種類の植物を一緒くたにすると頭がこんがらがります。

あと、植物を人や動物に例えた話を聞くことがありますが、「ん、こういうこと?」と意味のわからないイメージをしてしまうことも。

動物とは体のつくりが別物だと考えたほうがいい気がします。

ですので、まず植物の体を知ってもらうのに、花のつき方の3つの分類を紹介します。

雌雄同花・・・同じ花の中に雄しべと雌しべがある

雌雄異花・・・同じ株の中に雄花と雌花がある

雌雄異株(イシュ)・・・雄花と雌花、そもそも違う株にさく

種の話を聞いていると、よく「違う株から花粉をつけて」とか「雄しべを取り除いて(除雄する)」とか聞くのですが、花のつき方でやり方は違うようです。

雌雄同花だと雄しべを取り除いたり、熱湯(温水?)で花粉が出なくしたりしますし、雌雄異花だと雄花を切り取ったり、洗濯バサミのようなもので挟んじゃったりするそうです。

こういう操作のことを除雄(じょゆう)というのですが、共通点は花粉の出どころとなる雄花や雄しべを取り除く、と言うことですね。何かこういう話を聞くたびに下半身がうすら寒くなります(笑)

種子の生産ってどんな風に行ってるの?

何で除雄を行うのかというと、良い形質を持つ品種を手に入れるためにその親となる品種を交配させるのですが、その際交配させたくない種の花粉は出て欲しくないわけです。

この「交配させたくない種の花粉は出て欲しくない」が農作物の種作りのポイントみたいです。

お米(というか稲)は雌雄同花なのですが、種を作る時は交配させ、その中からよく出来た株を選別し、それを繰り返し固定する「交配育種法」という方法で種を作っているようです。

こちらのサイトを参考にさせてもらいました。

(小学生高学年向けってあるんですが、アラサー男子が勉強させてもらいました(笑))

サイトに詳しいですが、少しまとめると。この画像のような操作を行うそうです。

人が手を加えないと、イネはAはA同士で交配しますし、イネBはB同士で交配します。

ですので、A同士で交配しないよう、Aから雄しべを取り除いてしまいます(正しくは熱水に通し花粉が出ないようにしちゃうそうです)。

このAとBとを交配させて生まれた種をまた育てると、少しずつ性質が違うイネが育つそうです。

その中でも特に良い性質を持ったイネを選別し、種を取ります。

その種でまたイネを育て、その中から特に良い性質を持った・・・

と繰り返すそうです。

これを繰り返していくと、形質が固定されていきます

なんと固定するのには7~8回イネをくりかえし育て、種を取らなければならないそうです!

そこで暖かい環境で年に2~3回栽培して世代を促進するのを早めるという「世代促進技術(せだいそくしんぎじゅつ)」が登場したそうです。

それでも試験場以外の地域で新しいイネを栽培してもらい確かめてもらう必要があるので、試験場で形質が固定されてからも、品種となるまでさらに2~3年必要とのことです。

なんて長い道のりだ!

さらにさらに、この新品種は、その形質が失われないよう管理しないといけないので、毎年種の増殖を行っているそうです。その管理を行っている圃場で生産された種を原原種と言うそうです。この辺りは特に種子法の廃止と関係する部分ですね。

在来種・固定種・F1

上記、品種を作る際「固定」と出てきましたが、ここから固定種という名前がついたんでしょう。

どういうことかというと、種(A)を蒔き、作物(A)が育ち、その作物(A)から種(a)ができたとして、その種(a)をまた蒔いて育った作物(a)は、作物(A)と同じような形質を持つ(A=a)になるということです。

つまりは、親と子が同じ、種の形質が世代を超えて受け継がれる(固定されている)ものってことですかね。

種の話で、在来種・固定種・F1とよく聞きますが、ここの分類も少し頭がこんがらがるポイントなのかと思います。

例えば在来種はよく固定種と同じものとして説明されることが多い気がします。全く同じで言葉だけ違うのか?

ウェブでは在来種は

「動植物の品種のうち、ある地方の風土に適し、その地方で長年栽培または飼育されているもの。」(コトバンク:https://kotobank.jp/word/在来種-508609

と説明されています。

長年特定の地方で栽培されてきた、つまりその風土に合う品種だけが自然淘汰されたり、その土地で栽培する人が選別したり、結果として品種の形質が固定されたと言ったところなのでしょう。要するに在来種は固定種の一種で、ある地方に昔からあるってとこを強調する時に使われる言葉なんでしょう。

そして、最後にF1(Filial 1 hybrid)、直訳すると1世代交配種と呼ばれる種子は何ものなのか。

この種子を理解するのにはメンデルの法則を知らないと理解しづらいと思います。

ポイントだけまとめると

1、遺伝子は両親から引き継がれる

2、形質の中で対立する遺伝子のことを対立遺伝子という

3、対立遺伝子には優性(顕性)と劣性(潜性)がある

エンドウ豆の色で言うと、「純系の黄色の品種」と「純系の緑色の品種」が交配したら黄色のエンドウ豆のみが収穫される。ここで顕れた色(形質)である黄色が優性、顕れなかった緑色が劣性ということですね。

4、形質が父由来・母由来の1種ずつの、2種類の遺伝要素からなる

例えば黄色の形質をY、緑色の形質をyとすると、先ほど述べた「純系の黄色の品種」はYYと「純系の緑色の品種」yyとなります。

以上から、純系の品種同士が交配すると、Yとy一つずつ遺伝子を受けとった子が生まれます。対立する黄色Yと緑yの遺伝子は黄色Yが優性(顕性)なので、子供の色は黄色になるということです。

(純系同士じゃないと緑色の子も生まれるのですが、そちらの説明は先ほどのリンク先のページをご覧ください。)

つまり何が言いたいかというと、純系の品種があり、それらを交配させれば狙った形質をもった品種を生み出すことができるというわけです。

例えば、病気に強くて黄色いエンドウ豆Cを得たいと思ったら、純系の病気に強いという遺伝子を持ったエンドウ豆Aと先ほどの純系の黄色の品種Bを交配させれば良いということです。

(病気に強い、弱いは対立する遺伝子だが、病気に強いと色は対立しないので、両方優性の性質が出てくるってことだと思います。)

こうしてできた病気に強くて黄色いエンドウ豆は純系じゃなくなっています。

(純系の病気に強いエンドウ豆Aが緑色の遺伝子を持ってたり、純系の黄色のエンドウ豆Bが病気の弱い遺伝子を持ってたりするため。)

つまり、表には出てないですが病気に弱い遺伝子や緑色の遺伝子を持っているため、Cの豆同士を交配させると緑だったり病気に弱かったりするエンドウ豆が一定数生まれます。

ここでのポイントは、純系同士を組み合わせた子供1世代目のみ、狙った形質をもった品種を得られる点です。

この性質を生かした種がF1、つまり1世代交配種となるわけです。

何かと叩かれるF1の種

よく批判をされているF1の種、どの点が批判されているか?

先ほど説明したそれぞれの両親の良い点を引き継がれる現象を雑種強勢と言います。

固定種の種を取り扱う野口種苗の野口さんの本を読むと、野口さんも雑種強勢で生まれたF1の種は否定していません。

ではどの種を否定しているのか(というよりか危惧しているのか)?

初めは玉ねぎに見つかったのですが、雄性器官に異常があって,正常に花粉が作れない種が見つかりました。

先ほど農作物の種を作るのに「交配させたくない種の花粉は出て欲しくない」ことがポイントだと言いました。

今まで雄花や雄しべを取り除くことが大変でしたが、花粉が出ない形質を活かせばその作業がいらなくなるわけです。

この花粉が出ない形質(現象?)のことを雄性不稔と言います。

雄性不稔の種が見つかってから種苗会社はこの形質を活かして種作りを行うようになったとのことです。

そこを危惧されているようです。

子孫を残す機能をなくした品種を食べ続けて大丈夫なのか?と

野口さんは本の中で例を出しその危険性を危惧されています。

ただ、危険だと何か実証されているということはないようですが。

詳しくはそちらの本をお読みください。

以上、長くなりましたが、予習編は終わりです。

最後ちょっと宣伝も入れておきます。ぜひここだけでも読んでください!笑

当園、体験農園コトモファームでは野菜の種や苗を用意するのですが、基本的には全品種、固定種を用意します。(選べるようにF1も用意しています。)

なぜかというと、家庭菜園のように自分たちで野菜を育てて、収穫したものを食べるとなると育ちの揃いが悪い方が良かったりするんですよね。

F1の品種はすべての種に同じ形質が表われるので、ビシッと同時に育ってしまうわけです。

そうではなく、早く大きくなる奴もいたり、ゆっくり大きくなる奴もいたりと多少バラツキのある方が、ちょっとずつ収穫して食べる家庭菜園のスタイルには向いているということですね。

あと、同じ品種ならそんなにバラツキはないですが、味も多少差が出た方が飽きずに楽しめるってもんです!

しかも、雄性不稔じゃないので、種とりもでき、世代をつないでいくという楽しさもあります。自分でとった種をまた蒔いて大きくなるのは何とも言えない感動がありますよ!

終わり

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