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定年退職後、農家に。学校給食を無農薬野菜へ。


春日さん 60代 元公務員 立川市在住

市役所勤めから、定年退職し藤沢市で農家へ。

ー定年退職後の第二の人生。セカンドライフに選んだのは「農」

 元々、多摩市役所の職員だったの。役所にいた時はね、役所を定年退職したら、何しようかっていうのを探してたんですよ、だから毎年ね、退職前の五年間くらいは外国にね、探しに行ってたんですよ。それもすごく問題のある、最貧国みたいなね、バングラデシュとか、アフリカのブルンジとかインド、ネパール。そこで何かできないかって探してたの。

 仕事はそのとき、公民館勤務で社会起業家講座を開いてたんですよ。その講座の講師にEテレの「グランジュテ」で見た小島さんに来ていただこうと思ったんですよ。それで、小島さんのところへ、インタビューしに行ったんですよ。

話してるうちにさ、小島さんに誘われて、居住地の立川から50km近くもあり、通いきれるかという不安もあったけど菜園体験コトモファームをやることになったんだよ。それが2013年の3月。その年の4月、同じ教育委員会の中で、公民館から、小学校の給食と菜園プログラムの担当へ異動したんですよ。菜園プログラムっていうのが、多摩市の小学校の子供が授業の中で有機農業をやるってものだったんですね。

 給食でも前年に、子供が食物アレルギーで亡くなったっていうのが東京の調布市であったんですよ。定年退職した後は、農薬の全然ないような野菜を自分の手で作ってね、給食を通じて、子どもたちに安全で栄養あるものを少しでも食べてもらいたいと思うようになったの。

コトモファームに入会してしばらくして、小島さんが、農園経営や野菜の栽培方法を学ぶコトモファーム上級者(農起業向け)コースをその年の秋からしてくれるということで受講することにしたの。定年退職最後の仕事として、給食と有機農業っていう学校の菜園プログラムに関わって、小島さんのコトモファームを始めて、と全て農業に焦点が合い始めてきたわけですよ。急に。

 かなりそういう意味ではね、迷いがない状態にはなりましたよね。最後の一年間でね。まさにその農業っていうのに必然性が生まれてきて、本格的にやるっていう方向に入ってたんですよ。

ー農園設立に必要な知識をしっかり学べた農起業コース

 コトモファーム上級者(農起業向け)コースっていうのは、「堀出し物」的な講座だったと思う。菜園体験の講習も、結構わかりやすくて非常にためになるものだったんですが、このコースっていうのはも、もっともっとすごい幅広いね。野菜の栽培もすごく掘り下げた内容であるし、起業にあたっての経営的な、財務だとか、マーケティング的な要素だとか、ネット販売だとか、起業にあたって最低限必要な知識が網羅された内容で。かなり質の高い、深みのある内容を網羅的に講義してもらったのでそれを自分で活用するっていうのは、自分でもう一回咀嚼して勉強し直さなければ、自分のものとして使いにくいけど。

 自分も色んな講座や研修を受けてきたけど、普通の講座ってのはさ、独自の考え方や経験則にのっとったものが多くて、かなり経験的要素が高いし断片的ですよね。小島さんの農起業コースは全体的に網羅した形で、データなどで客観性をもたせて、なおかつ、最先端的な、大学などの研究成果みたいなものも提示してくれるんですよ。

 一般的に講座で学べるのは、過去から現在までで、講師の経験の範囲を、学問的に紐解くってことをあまりしない現場の知識です。そうじゃなくて経験を理論的な研究成果みたいなのを踏まえて紐解いてくれるってそうないですよね。学校や研究室だったら違うかもしれないですが、現場の研修ではありえないです。

ー身体がついていかなかった1年目

 1年目はね、9月から始めたじゃないですか。2014年のね。その時は例えばね、2日作業するでしょ、そしたら3日寝込んでたんですよ。それまで肉体労働やったことなかったんですよ。それまでデスクワークですよ。役所でね。肉体労働なんて全然ないわけですよ。

 夏の一番厳しいね、雑草とかボンボン生えるそういう厳しい夏を終わってから、始めたんですけどね。だからある程度は、楽な時期がから始めたんですよ。それでも寝込む日々が続いて。身体が慣れるまで3か月、っていうけど、慣れるまでは、大変だったね。

ー飛び込み営業で切り開いた「給食の取引」と予想以上に厳しい「規格」

 退職後の夢である学校給食で自分の無農薬野菜を子ども達に食べてもらうための一歩を踏み出すべく、藤沢市の学校給食課に問い合わせたら、業者が独占的に供給していますからそこに聞いてみてくださいって。なので、その業者を訪ねて行って、自分は、実はね、元々役所の職員で、給食担当だったことから、子どもたちに給食で無農薬野菜を食べてほしいという思いで今、野菜作りをしているって話をしたの。

 そしたらさ、藤沢市内でジャガイモ作ってくれる農家さんがいないから、じゃがいもを作ってほしい言われて。ジャガイモの他には、カボチャとそれからサツマイモと人参とブロッコリー。その5種類について作りましょうかねって話になって。

 やり始めた頃は、給食に納品すること自体が数年かかるんじゃないかって思っていたのが、作り始めたのが9月で翌年から給食で使ってくれてるっていうのはびっくりしたんだけど、うれしかった。

 だけど1年目はジャガイモとカボチャとブロッコリー、それしか納品できなかった。

人参とサツマイモは納品できなかったんですよね。今年2016年の納品は、今の所ジャガイモとカボチャとサツマイモと大根、あと年明けにブロッコリーってそういう感じ。

 「給食への納品は続かない」っていうのは、噂で聞いていて、その理由が分かった。

「規格」という厳しさがあるから。だから規格外のものを作っちゃうと厳しいんですよ

納品1年目ってのはね、ジャガイモはさ規格外のもののほうがよっぽど多くて、だから大量に在庫でさ、ほんとやばかったっていう感じね。恐ろしいリスクがあるんですよ、量があればあるほど。だからそんな簡単にはね、大量に作って大量に売るなんてわけにはいかないんですよね。だからね、給食用に作るっていうのはかなり厳しいんですよ。

 今は、給食、月一のマルシェ、自分ちの前のガレージセール、妹がフリーマーッケットで売ってくれたり、藤沢市内の八○八、多摩市の百将屋とかに出してますね。

無農薬無肥料でやってますが、ここの畑は、ジャガイモと相性がいいんですよ。黙ってても育つ。ただ1年目、間引きしなかったから小粒なのがゴロゴロできちゃったんですよ。給食じゃあLと2Lじゃないとダメだっていうからね、Sみたいなのばっかりできて

でも今回間引きしたから出来が良くて、だから今年はね規格外っていうのがあんまり出なかったからね、だから販売してしまうのにそんなに苦労しなかった。

 そういう風にね、販売も栽培も、画一的じゃなくて、実験的な方法で作ったり、売る時期だとか色々ありますから、それを工夫するっていうかね、教科書とか教えられた通りにやらないといけないわけでもないし、試行錯誤が必要なことがわかったね。

 今年の春ね人参植えた時は人参と雑草が混色っていうか人参よりも雑草の方が伸びちゃって、人参収穫する時雑草かき分けて探した。最初の除草が本当に大事だなと身に沁みたよ。だから、秋植えは、最初から、除草をしっかりやったからしっかりできたし、試行錯誤の繰り返しなんだなーと。

ーこれからの目標・野望

 給食に出す量を、とにかく、着実に増やしていきたい。2017年は最低3倍にしないといけないなって思ってます。最低3倍にするために必要なのは現場作業なんですよ。

かといって、現場作業だけに拘束されて夢中になって、それで「なんだか、やったぞ!」なんて達成感を感じていると、全然自分の考えてる段階までは近づけてないなってそういうのもあるんですよ。

 そうじゃない現場の作業じゃないところの仕組み、目標に近づくための仕組み、それも合わせてやっていかないといけないと思ってるんですよね。藤沢市内の学校給食全体に供給するのが最低限の近未来の目標ですよね。そうすると自分が、この畑でフルにやったとしても量が決まってるわけですから、1日の量に満たないわけですよ。学校35校あるみたいですけど、その1日の全体量に満たないわけですから、膨大な量なんですよね。

 役に立たないようなことを始めてるつもりじゃないんで、もうちょっとそのなんていうかさ、最低限必要な量がね。自分がやってることの意味があるくらいね、そのくらいの量ができるだけ早い段階でできないと意味ないよね。

マルチを張る管理機

 畝立て畝立てとマルチ張りを同時にやる管理機を使ってやっていくんだけど、初年度目にさ、役所の職員時代の同僚の、若い仲間がさ、この畑ほとんど全体を1日でやった。彼も、役所やめてさ、中国に1年留学して。中々ダイナミックなところがあって。

 今だって彼は住所2箇所あって、都内と長野県に住んでる。長野県では移住促進ツアーとかやったり、地方創生の事務局やったりしてね。すごい野望を持ってるみたい。そういう面白い若者から刺激をもらったりしてね。

 自分の趣味の延長みたいなのも悪くないけど、俺は、もっと刺激的で、日本の給食を無農薬野菜に変えていくような取り組みがしたいと思っている。

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